「小島修二の時代を斬る」12月号

  「平成の大合併」のモデルとされた篠山市が、今や、合併による財政破綻モデル になろうとしている。 瀬戸前市長の任期中の引退を受けて、3月に登場した酒井市長は、就任後、篠山再 生市民会議(以下、「市民会議」)を発足させた。11月2日、市民会議は、夕張市並みの財政再建案ともいえる「篠山再生計画(行財政改革編)」に対する第1次答申を出した。
「答申」の中では、「市民・事業者・職員・議員がみんなで負担を分かち合う」と して、職員400人体制、職員年収2割削減、議員報酬総額2割削減、補助金1割削減、 投資的経費1億円削減、物件費1〜2割削減などを提言している。
ところで、この財政悪化の要因について「答申」では、@右肩上がりの合併計画と 甘い将来見通し、A地方債を活用した身の丈以上の公共事業、B当てが外れた地方 交付税、C財政収支見通しの狂いと不十分だった行財政改革、D欠如していたリス クマネジメント、をあげている。
政府は、地方分権の受け皿として、1999年3月末にあった3,232の市町村を1,000に 統合することを目標に、合併特例債、交付税特別措置など財政支援をテコに、強力 に「市町村合併」を促進してきた。そのモデルとして、篠山市がもてはやされた。 自治労兵庫県本部は、合併論議の中で、今日の事態を予測し、警告を発してきた。 しかも、政府は、市町村合併の流れができると、「三位一体改革」による地方交付 税削減を強行し、自治体は合併後の財政計画を根本から変更せざるを得なくなった 。政府は、自らの財政危機を、自治体および国民に負担転嫁しているにすぎない。 市民会議の「答申」が指摘するように、確かに前市長および市当局の責任は重い。 しかし、政府への責任追及が極めて弱いといわざるを得ない。
「答申」では、職員400人体制が提起されているが、合併後すでに120人削減されて おり、さらに161人削減するというのである。しかも、正規職員を削減し、非正規 職員に置き換えた物件費を1〜2割削減して、誰が行政サービスを担うのか。「答申 」が言うように、「市民と行政が共同することでそれを補うことができる」と本当 に考えているのであろうか。
職員の年収2割削減について、市民会議の長峯純一議長は、職員の質問に対して、 「職員の生活のことは考えていない。純粋に財政的にはじき出したもの」と答えて いる。これで職員の人材確保(最も計画では、今後、年3人しか職員を採用しないの で必要としていないのかもしれないが)や士気の高揚が図れるというのであろうか 。現に、当局が行った、退職勧奨にすでに56人もの職員(13人の部長のうち11人) がこれに応じているという。このままでは、市行政がマヒしかねない状況にある。 酒井市長は、市民や職員に負担を押し付けるばかりではなく、市民や職員とともに 、合併モデルの市として、政府に「物申す」ところからはじめなければならない。

「小島修二の時代を斬る」11月号

   福田・小沢会談での、福田首相の大連立提案。民主党が、これを直ちに拒否決定。 その後の小沢氏の民主党代表辞任表明。日本の政界は、大きく揺れている。
小沢氏は、記者会見において、「@安全保障政策について、(福田首相が)きわめて 重要な政策転換を決断した。それだけでも政策協議開始に値すると判断した、Aマ ニフェストで約束した「国民の生活が第一」の政策を政策協議を行えば実行するこ とが可能になる、B民主党は、さまざまな面で力量不足であり、政権担当能力はあ るのか、次期衆議院議員選挙は厳しい、Cあえて民主党が政権の一翼を担い、国民 との約束を実行することが民主党政権を実現する近道である」としている。
確かに、先の参議院議員選挙での自民党大敗は、「宙に浮いた年金」、「政治とカ ネ」、閣僚による問題発言などが引き金になったことは事実であり、自民党への批 判が、野党第1党の民主党に投票したといえよう。
しかし、前号でも指摘したように、その根底には、小泉、安倍と続いた政権の下で 進められた、新自由主義に基づく「構造改革路線」が、この社会に大きな「格差」 を作り出し、働くものの現在及び将来に大きな不安を与えたことに根本的な原因が あったことを捉える必要がある。福田首相の所信表明演説の中でも、「格差」問題 の解決を強調せざるを得なかったのである。
それだけに、民主党は、野党の結束を強め、まさにマニフェストで約束した、「国 民の生活が第一」の立場を鮮明にし、国会闘争を展開しなければならない。それを 政府・与党が妨害するならば、その時は、解散・総選挙を求め、打って出る決意を 持たなければならない。
  国民は、必ずそうした政治姿勢に支持を与えることを確信する。国民の支持があれ ば、いかなる困難はあっても何事も実現できる。小沢氏は、国民をもっと信用すべ きであった。

「小島修二の時代を斬る」10月号

  先月記載した、旧日本軍が住民に「集団自決」を強制したとの記述を消し去ろうとする教科書検定の動きに、沖縄の人々が怒りを結集した。9月29日の集会には、11万人が参加した。実に、沖縄県民のお年寄りから子供まで含めて、10人に1人は参加したことになる。
 まさに、「歴史の真実」を消し去ろうとする「教科書書き換え」を許さない、それが、沖縄県民の総意であることを示した。さすがに、政府・文部科学省も即座に 是正へむけた動きを開始した。
 海の向こうのミャンマーでは、民主化を主張する住民・僧侶のデモを鎮圧するために、軍が発砲し、多くの死傷者を出し、日本のフリージャーナリストが死亡するといった不幸な事態が起きている。
 一方、民主主義が後退したとはいえ、日本では、平和的な沖縄の集会に、政府は、その方針を変更せざるを得なかった。また、参議院議員選挙で「与野党逆転」が 現実のものとなった結果、安倍前首相に変わって登場した福田首相は、民主党を中 心とする野党との「話し合い」を強調せざるを得なかった。
 先の参議院議員選挙での自民党大敗は、「宙に浮いた年金」、「政治とカネ」、 閣僚による問題発言などが引き金になったことは事実であるが、その根底には、小泉、安倍と続いた政権の下で進められた、新自由主義に基づく「構造改革路線」が、この社会に大きな「格差」を作り出し、働くものの現在及び将来に大きな不安を与えたことに根本的な原因があったことを捉える必要がある。福田首相の所信表明演説の中でも、「格差」問題の解決を強調せざるを得なかった。
 民間給与が9年連続減少したことが、国税庁の「民間給与実態統計調査」で分かった、との報道があった。今こそ労働者は、“怒り”を行動で示さなければならない。大衆的な怒りを結集すれば変えることができる。それを沖縄県民が示した。いや、国民が参議院議員選挙で示した。そのことに確信を持って起ちあがろう。

「小島修二の時代を斬る」9月号

  沖縄戦での集団自決に対して、軍の強制についての教科書の記述に対し、検定の 中で削除した問題を巡って沖縄では、政府の姿勢に対し、大きな怒りとなって広がっている。9月29日には、95年の少女暴行事件に抗議して開催された県民集会規模 (7万5千人)の集会を予定している。
 そのような中、9月8日から、3泊4日の日程で、自治労兵庫県本部沖縄視察団の団長として参加をした。この視察団は、今年で10回を数え、初めて、最も激しい地上戦が展開された、伊江島を訪問した。当時そこには、日本軍基地としての飛行場があり、守備軍がいたため、住民を巻き込んだ悲惨な戦闘が展開され多くの住民の命を奪った。
 当時、徹底した皇民化教育がおこなわれ、捕虜となることを許さない。手榴弾が手 渡され、「自決」を強要されたことは、証言からも明らかである。にもかかわらず名誉毀損の裁判が起こされていることを理由に、教科書からその記述を削除する政府の姿勢を、厳しく追及しなければならない。
 朝日新聞が行った岩国市の有権者の世論調査では、米艦載機の岩国基地移転に反対する意見が過半数(59%)を占めているものの06年4月の市長選前に比べて、10%下がった、との記事が掲載された。その原因として、建設中の市庁舎への補助金支 出の見送りなどが上げられている。移転賛成の理由として「地域振興が期待できる 」が増えている。
 政府は、沖縄を始め基地周辺では、同様の手段を繰り返してきた。軍隊は国民を守 らない。それどころか、軍隊や基地があること自体が危険にさらされるということを沖縄戦は語っている。そのことを教訓にしなければならない。後世に禍根を残さないためにも、「基地も軍隊もない平和な日本」を目指すたたかいが求められてい る。

「小島修二の時代を斬る」8月号

 7月12日公示、29日投票で行われた参議院議員選挙は、自民党の大敗、民主党の大勝という結果となった。しかも、安倍首相を与党としてかばい続けてきた公明党も、選挙区で落とすなど後退した。これは、当然の結果であり、国民の政府・与党に対する批判がそれだけ強かったといえる。
マスコミの調査でも、有権者が投票の際、「年金」、「政治とカネ」、「格差」の問題の順で重視したとしており、小泉内閣から続く「格差問題」に加え、「宙に浮いた」年金問題に代表される生活不安、そこに一連の閣僚による政治資金をめぐる問題など安倍内閣、政府・与党に対する不満の拡大が、投票結果として表れたといえよう。
安倍首相は、選挙戦の中で、「首相に誰がふさわしいか、を選択していただく選挙」と発言していた。にもかかわらず、開票の最中にもかかわらず、敗北がほぼ確実といわれる中で、早々と、首相の座に居座り続けると表明した。
安倍首相は、「今後も責任を持って、改革を進めなければならない」としている。しかし、選挙結果は、国民が、安倍政権に「ノー」の答えを出しているのであり、選挙後の世論調査でも、安倍首相に対し、「続けるべき」を「辞めるべき」が上回っていることにも示されている。
安倍内閣は、国内のみならず海外でも窮地に立たされている。「拉致問題」で颯爽と表舞台に現れ、政権の最重点課題としてこの「拉致問題」に取り組み、北朝鮮に対して強硬路線をとり続けてきた。ところが、米朝協議を通じて北朝鮮の核問題が進展を見せており、いまや6カ国協議の中で、日本政府が孤立する立場にたたされている。さらには、「慰安婦問題」で、米議会において「日本政府の謝罪を求める」決議が採択された。
安倍首相は、内閣改造で切り抜けようとしているが、国民からのさらなる批判を受けることは必死であろう。このような安倍首相を、自ら退陣させられない与党(自民・公明)自身が政権担当能力を失っているとしか言いようがない。
このうえは、安倍内閣の早期退陣を求め、解散・総選挙での与野党逆転、働くものの立場に立った政治の実現を目指してたたかうことが求められている。


「小島修二の時代を斬る」7月号

高い支持率でスタートした安倍内閣も、参議院議員選挙を目前に控えて、大きく支持率を下げている。
その最大のきっかけは、「宙に浮いた年金、5,000万件」であるが、すでに安倍内閣は、昨年9月発足以来、閣僚の不祥事、問題発言が続いた。佐田前行革担当大臣の辞任、松岡農水大臣の自殺。「女性は子供を生む道具」と発言した柳沢厚生労働大臣は、未だに大臣の座に居座り続けている。こうした一連の問題だけでも安倍首相の責任が問われてしかるべきであろう。
 そこに追い討ちをかける決定的な発言が閣僚の中から行われた。それは、久間防衛大臣の講演での「長崎に落とされ悲惨な目に遭ったが、あれで戦争が終わったんだという頭の整理で、しょうがないなと思っている。それに対して米国をうらむつもりはない」との発言である。
 担当大臣であり、しかも長崎選出の国会議員である久間防衛大臣から出た発言だけに、その衝撃はきわめて大きい。早速、田上長崎市長は、上京し、久間大臣に直接抗議するなど批判の声は大きく広がった。
 にもかかわらず、安倍首相は、久間大臣をかばった。このような発言をした久間大臣の責任はもとより、それをかばった安倍首相の責任は極めて重い。
 安倍首相は、就任以来、「戦後レジーム(体制)」からの脱却を主張し、集団的自衛権を容認し、5年以内の憲法9条の「改正」へ向けて突っ走っている。そうした中で、自民党幹部の中でも、公然と「核武装論」を主張するものが出てきていた。久間大臣の発言は、こうした流れの中でのある意味では、必然とも言える発言であっ た。
 ことは、大臣の交替で済まされるものではない。安倍内閣、ひいては、政府・与党の姿勢そのものの問題である。それだけに、このたびの参議院議員選挙で、与野党逆転を実現し、安倍内閣を早期退陣に追い込むことが求められている。


「小島修二の時代を斬る」6月号

 国会で指摘された「宙に浮いた年金記録5000万件」、「年金支給漏れ分の5年時効」が大きな社会問題となる中で、政府・与党は、社会保険庁改革法案の衆議院厚生労働委員会で採決を強行した。 
 結果、直後のマスコミ各社の世論調査では、軒並み内閣支持率が大きく低下した。参議院議員選挙を前に、危機感を持った安部首相は、自民党の中川幹事長に、年金支給漏れを全額補償する年金時効停止特措法案の議員立法による提出を指示した。これを受けて与党は、社会保険庁改革法案を、この法案との抱き合わせで早期成立を図ろうとしている。
また、「5000万件」の調査については、1年間で行う。納付の領収書等確認できない分については、第三者機関を発足させ、そこで判定するとしている。しかし、現実的には、この調査に10年はかかるとされている。
 先日行われた党首討論で、安部首相は、小沢一郎民主党代表の質問に答える中で、これらの問題が、かつての国鉄労組を引き合いに出しながら、労働組合(自治労国費評議会)にあるかのような答弁を行っている。
 そもそも基礎年金番号を十分な準備と体制もなく導入したのは誰なのか。社会保険庁改革を進める発端となったひとつに、国民年金の納付率低下問題があったが、収入のない学生にまで国民年金保険料を支払わせたり、国民年金業務を行う職員を国家公務員とし、市町との連携を断ち切ってきたのは誰なのか。
先の年金改悪で強まる国民の批判を避けるために、社会保険職場の第一線で働く職員に、その責任を押し付けてきた。このたびも同様の手を使おうとしている。しかし、真の責任はどこにあるのか、誰なのかを正しく見る必要がある。
いうまでもない、自民党を中心とする政府であり、官僚である。このたびこそ真の原因と責任を明らかにし、安心できる年金制度確立へ向けて、真の改革の方向を示さなければならない。



「小島修二の時代を斬る」5

 先日、NHKの番組で、バスの規制緩和以降、高速バスの熾烈な値下げ競争が行われている現状ついての報道番組を見た。
 今や大阪―東京間が3,700円、新幹線の実に4分の1近い価格で売り出されている 。しかもそこでは、乗客確保のため、100円単位の値下げ競争が繰り広げられてい る。
 その番組の中で、ある下請けのバス会社は、仕事を満杯とっても赤字。そこで働く運転手は、大阪―東京を夜行で往復の繰り返し。会社の仮眠室で睡眠をとり、家に帰るのは、週に1回。それでも、かつて観光バスの運転手をしていたころは、年収が600万円はあったが、今は、その3分の2しかないという。
 最近、長距離バスの事故が相次いでいる。過密な労働の結果、運転手の過労によ る居眠り運転などが原因であることが指摘されている。
 また、航空機の整備不良が原因の事故が相次いでいる。現在、航空機の整備の多 くを中国や韓国など、整備費用を安く上げるため、これらアジアの国で行われているという。
 4月25日、福知山線での脱線事故から2年を迎えた。JR西日本は、当初から問題 として指摘されている「日勤教育」の有用性を今日に至っても主張するなど、被害者・家族は、JR西日本の安全対策に対する不信感は今なお払拭されていない。その一方で、JR西日本は、競合する私鉄との競争を強め、前年を上回る利益を上げている。
 企業は、競争に打ち勝つため、儲けのために、「効率化」という名の下に、安全無視、人命軽視の風潮がますます強まっている。このような企業の姿勢は、許されることではない。
利用者である私たちも、「安ければよいのか」「早ければよいのか」を問い直す必要があろう。「安全」にはカネがかかる。そこに働くものの生活と人権も保障されなければならないのである。企業に対して、「安さ」や「速さ」よりも、「安全」 、「安心」を求める取り組みこそが求められている。



「小島修二の時代を斬る」4月

 只今、統一自治体選挙の真っ最中。「平成の合併」によって、統一自治体選挙での実施率は、30%を割っているという。兵庫県でも、とくに郡部で合併が行われため、このたびの選挙は、県議会と神戸市議会など都市部の市議会議員選挙が中心である。

 「地方分権」が叫ばれて久しい。確かに国税から住民税への税源移譲、国から県、県から市町村への事務移譲が進むなど、一見「分権」が進んでいるかのようである。ところが現実は、それとは逆の方向に向いているといわざるを得ない。国は、法律、行政指導、そしてカネを通じて、これまで以上に中央集権を強化している。

  小泉内閣以来、進められてきた「三位一体改革」によって、地方交付税が大幅に削減され、特に合併によって新たに誕生した市町は、「だまし討ち」にあったようなものである。合併した但馬のA市の市長は、「市の公共事業費は、合併前の4分の1しかない。予算を組むにも、何を削るかの検討ばかりで、新たな政策展開など考えられない」と嘆く。ことの現実は、自主、自立など持ち得ないのが現状である。

しかし、嘆いてばかりいるわけにはいかない。「上」からの中央集権の動きに対して、地域から「住民自治」確立の取り組みと、地域から国のあり方を変える運動を進めていくことが今求められている。戦後、地方自治制度が確立されたが、率直に言って、「住民自治」確立の取り組みが弱かった。地方自治についても「行政任せ」の状態が続いた。教育、子育て、医療、福祉、環境など生活に身近な問題をともに考え、住民自らが参画する、そのような地域社会を作り上げていかなければならない。

このたびの統一自治体選挙を通じて、ともに地域のことを考える機会に「なる」こと、いや、「する」ことが重要である。と同時に、7月に予定されている、参議院議員選挙において与野党逆転を勝ち取り、「政治の流れを変える」ための前哨戦としてもきわめて重要な選挙である。



小島修二の時代を斬る 3月


  以前、北海道の友人に札幌を案内してもらう機会があった。札幌市郊外にある藻岩 山から市街地を見たときに、先ず驚いたのは、サッポロビールの煙突しかないことであった。私が持つ100万人を超す大都市のイメージとしては、当然のこととして、大きな工場地帯があるものと考えていたからである。友人曰く、「札幌は、一大商業都市である」。
 かつての北海道の基幹産業は、ことごとく衰退していった。炭鉱、鉄鋼、造船、(旧)国鉄、林業、牧畜など。そのため、道内から、企業や国の機関などの支店ある札幌に人口が集中して行った。  今、夕張市が連日のようにマスコミ報道で取り上げられている。昨年10月、夕張市は再建団体への意向を表明した。市当局は、再建計画として、学校など公共施設の統廃合、市民への大幅な負担増、そして市の職員には、総人件費の大幅な削減策を発表した。
 夕張市の財政破綻は、国のエネルギー政策の転換で市内に24箇所あった炭鉱が次 々に閉山したことに端を発している。かつての人口の10分の1にまで人口は減少した。加えて人口流出への対応として雇用創出の必要から、工業から観光へとシフトするための財政負担が重なっていった。国の政策の失敗によるものであることは明らかである。
 夕張市民も市職員も大変な状態に置かれている。しかし、周辺の旧産炭地などの市町村も同様の状態にある。むしろ周辺自治体からは、「でも夕張はまだいいよなー」という声が聞かれる。マスコミが騒いでいることもあり全国の支援が寄せられている、「自分たちは何の支援もなく切り捨てられていくだけ」、という悲鳴ともいえる叫びである。
 夕張市の職員は、給料が30%カット、年収ベースで40%減、退職金もこれまでの3分の1、希望退職という名の「首切り」で半数の職員がこの3月末で退職する。4月からは、残された半数の職員で市政運営を行っていかなければならない。これらの動きは、道内はもとより、全国に大きな影響を与えつつある。  戦後、政府は、一貫して法律と補助金などを通じて、自治体への統制と政策誘導を行ってきた。地方分権が叫ばれて久しいが、政府はあくまで、権限と財源を放そうとしない。地方切捨ての政府の政策を転換するためにも、地方から声を上げ、政権交代を果たす以外にない。

「小島修二の時代を斬る」2月号

 医師不足が大きな社会問題となるなかで、今、但馬地域の公立病院の再編をめぐって揺れている。
研修医制度の変更により、条件のよい都市部の民間病院に研修医が集中し、大学病院が不足した人材を一斉に引き上げたため、地域の中核病院である公立病院では、診療体制が維持できず、深刻な問題となっている。
とくに、但馬地域では住民の生存権に関わる深刻な問題となっている。民間の医療機関が少ない農山村では、公立病院がその地域の医療を支えている。しかし、このような地域には医師の来てがない。加えて自治体の財政難が追い打ちをかける。
自治労は、美方郡内の新温泉町職、香美町が連合但馬地域協議会などとも連携し、「美方郡の医療を考える会」を立ち上げ、地域住民や首長・議員の皆さんにも呼びかけ、学習会・シンポジウムなどを取り組んできた。
そのような動きのなかで、兵庫県が中心となって、但馬地域の全首長も入れた「但馬の医療確保対策協議会」が立ち上げられた。この地域の医療体制が危機的な状態にあることを示しており、こうした「協議会」が設置されたことは評価できよう。
ところが、その後が悪い。出石病院、梁瀬病院、村岡病院の入院病棟を廃止し、診療所化するとの重要方針が、住民に対する説明や意見も聞かずに方針を発表した。
地域・住民の実態をどれだけ把握したのかはなはだ疑わしい。出石、山東、浜坂などでは、病院縮小反対の署名活動が行われている。出石病院長などなかからも「造反」の動きが出ている。
但馬地域は、過疎化と高齢化が進行している。「平成の合併」がそれに拍車をかけた。この地域ではますます生存条件が失われている。まず、政府が進める効率化優先の財政運営では対応できないこと、そして何よりも、「住民自治」を大切にした行政運営が求められる。
自治体が「上」から方針を押しつけるのではなく、地域のことは住民自らが決める。
情報を提供し、それをサポートするのが自治体のあるべき姿ではないか。



「小島修二の時代を斬る」1月号を送ります。

弱い者いじめ正当化する政治の流れを変えよう

 新年あけましておめでとうございます。  昨年は、連日のようにマスコミを通じて公務員攻撃が行われました。私たちからみればひどいものですが、多くの視聴者には、「公務員悪玉論」が浸透しているのが現状です。
 1970年代、日本社会は「総中流」ともてはやされました。ところが、小泉内閣も終ろうとする頃からさかんに「格差社会」の問題が指摘されるようになりました。とくに、昨年7月、OECDが日本の相対的貧困率は、27カ国中5番目に高いと発表したことが、衝撃をもって受け止められました。
 90年代後半以後、企業は、リストラの名の下に、正規労働者の首切りを強行し、非正規労働者に置き替えていきました。学校を卒業しても正規雇用の働き口がない。フリーターとニートの問題、フルタイムで働いても年収200万以下の「ワーキングプア」の増大が社会問題となっています。
 加えて、小泉内閣は、所得税の累進度の緩和、高齢者への大幅増税、医療・年金・介護など社会保障掛金、負担増、給付の引き下げを強行してきました。
 しかも、安倍内閣は、大企業が史上空前の利益を計上しているにもかかわらず、法人関係税の引き下げを検討しています。
 04年の年金制度改悪に対する国民の批判の鉾先を社会保険庁改革へすり替えてきました。国民の増税、福祉切り捨てへの不満をマスコミを使って公務員を悪人に仕立てあげているのです。
 終身雇用を機軸とした日本型雇用の破壊による雇用不安、失業者の増大と、今や労働者の3人に1人は低賃金にあえぐ非正規労働者という現状が、公務員攻撃を許す基盤をつくり出しています。それだけに、官民、正規・非正規を超えた連帯、住民とともに「地域の暮らしを考える住民共同運動」を通じて公務員攻撃をはね返していかなければなりません。
  「格差社会」をつくり出した政府・与党の政策に真っ向から対決し、07春闘、統一自治体選挙、参議院議員選挙を通じて、政治の流れを変えましょう。