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自治ひょうご 連載記事「尾西が斬る!Vol.3」まとめ

賃金確定闘争に向けて、8月に出された人事院勧告の課題への対応、労使交渉の必要性や当局(首長)に向き合う基本姿勢などについて、より具体的な提言や、さらに阪神大震災から30年の節目の今年、「大規模自然災害に対応できる人員確保」をテーマに取り組みを進めるため、その観点からも組合員が安心・安全に働ける職場環境の整備や賃金改善について触れたシリーズ「尾西が斬る!Vol.3」

自治ひょうごで2025年7月15日号から6連載したものをまとめて再掲します。

人勧を上回る賃金改善へ

今年の春闘では連合に結集する労働組合が、昨年に引き続き平均5%以上の賃上げを勝ち取りました。これら民間企業の実態から、8月には人事院の給与勧告が出されます。
民間企業が若手重視の賃金改善を行っていますが、この間、人事院はさらに若年層を優先した改定を行ったことで、中高年層の賃金が抑制されてきました。現在の若手職員も経験を積み、いずれは職場を中心に支える中堅職員となります。若い時は高いと思った賃金がそれほど上がらない、そんな賃金体系となっているのが現状です。
人員の確保が厳しい状況にある公務職場における賃金改善は喫緊の課題です。新規採用者の確保のための初任給改善はもちろん、早期退職を防ぐためにも全世代を対象とした賃金改善が必要です。
民間企業の大幅な賃金引き上げを受けて、今年の給与勧告も昨年並みの引上げ改定が期待されるところですが、世代間でどのような配分がなされるのか注視が必要です。
8月に人事院勧告が出されれば、いよいよ今年の賃金闘争がより具体的な取り組み段階に進みます。ただ単に人事院勧告に準拠するだけでは、人員不足の解消につながる賃金改善とはなりません。
各単組は11月の賃金確定闘争に向けて、組合員の声を集め、人勧を上回る賃金改善につながる運用改善の要求づくりを進めなければなりません。
今回のシリーズでは、賃金確定闘争に向けて、8月に出される人事院勧告の課題への対応、労使交渉の必要性や当局(首長)に向き合う基本姿勢などについて、より具体的な提言をしていく予定です。
さらに、兵庫県本部は阪神大震災から30年の節目の今年、「大規模自然災害に対応できる人員確保」をテーマに取り組みを進めています。その観点からも組合員が安心・安全に働ける職場環境の整備や賃金改善について触れていきます。
今シリーズも、今夏の暑さに負けないぐらいの熱い想いをみなさんにお届けします。お付き合いください。


人勧まかせにしない確定交渉に

8月上旬に人事院勧告が出されると、いよいよ賃金確定闘争に向けた動きが本格化していきます。年間の賃金闘争の最大のヤマ場を迎えます。しかし一方で「うちは人事院勧告に準拠してもらえている」と、賃金改善要求を行わない単組も少なくありません。
そもそも労働基本権制約の代償措置としての人事院による勧告制度は、あくまで国家公務員を対象とした勧告です。
その問題点として、迅速な実施にかけることや、政治の力に左右され第三者機関としての役割を果たせていないことが挙げられます。労働組合の参加、関与が認められていないことも大きな問題と言えます。何より、地方自治体の実態に即した勧告ではないことを理解する必要があります。
勧告は俸給表の改正を行うだけで、それをどのように運用するのかは含まれていません。例えば、国家公務員は10級まで運用されていますが、兵庫県内ではほとんどの自治体が6~8級の運用となっています。
また、今年から県内全自治体で支給されるようになった地域手当ですが、近隣との格差が残されたままで、人材確保に影響が出ています。
このように、それぞれの地方自治体固有の事情は人事院勧告では考慮されないので、しっかりと労使協議を行い賃金を決定していく必要があります。
私たち地方公務員は給与の決定原則に則り労使交渉を進めることができます。地公法では、「職員の給与は、生計費並びに国及び他の地方公共団体の職員並びに民間事業の従事者の給与その他の事情を考慮して定められなければならない」とされており、また、「職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める」とされています。
「生計費」の考慮には働く者の声が反映されなければなりませんし、「その他の事情」の考慮についても労使でしっかりと協議をする必要があります。まさに労働組合の出番です。
今年も引き上げが想定されている人勧の完全実施は最低ラインとして、さらなる改善を求めていきます。


「人勧準拠」だけでは埋まらぬ格差

8月7日に人事院勧告・報告が公表されました。今年の勧告は、基本給(平均3・62%)、一時金(0・5月)の引き上げ、多くの組合員から強い要望のあった通勤手当においても、交通用具使用の各距離区分での引き上げ、駐車場の利用に係る手当の新設などの内容でした。
人勧は、憲法に保障された労働基本権制約の代償措置として、国家公務員(以下、国公)の俸給を民間企業(100人以上)と比較し、均衡を保つため人事院が国会と内閣に行う勧告です。あくまで国公の俸給が対象であることを押さえておく必要があります。
一方、国公と地方公務員の給料はラスパイレス指数で比較されます。人勧・国公に準拠するのであれば、地方公務員のラス指数は国公と同じ水準の100でなければなりません。しかし、兵庫県内自治体のラス指数の平均は99程度、町に限ると97、最低は94弱となっています。さらに、地域手当の違いや地方には無い手当が国公には支給されているので格差はさらに広がります。また、地域手当の支給率や賃金の運用の違いがあり、自治体ごとでも格差があります。
人勧準拠だけでは国公や自治体間の格差が解消できません。現在、大きな問題となっている人材確保難を解決するためには、人勧を上回る改善を進めていく必要があります。
駐車場の利用に係る通勤手当の新設については、上限が5千円となっていますが、そもそも公共交通が整っていない地域や家庭の事情による車の使用については、人材確保の観点から当局の責任で負担すべきものです。人勧で出された上限額にこだわることなく、必要額を要求していかなければなりません。
初任給や昇格基準の運用改善、各種手当額など、人勧を上回る賃金改善の取り組みは、当局との粘り強い継続した協議が必要です。
労働組合の取り組みは、組合員の生活を支えるとともに、人材確保の課題解決につながり、自治体を変えていける力があるという自覚を持ち、取り組みを進めていきましょう。


人材確保の視点での改善に

昨年の人事院勧告では、人材確保の困難性などの課題に対応するために「給与制度のアップデート」として、初任給や若年層の俸給の大幅な引き上げ、係長級以上(3級~)の初号の額の引き上げなどが勧告されました。
今年度も、引き続く人材確保の課題に対応するため、若年層に重点を置きながらも全職員の俸給の引き上げ、比較企業規模の引き上げ(50人→100人)、通勤手当の引き上げや駐車場利用に係る通期手当の新設(上限5千円)など、激化する人材獲得競争を踏まえた勧告となっています。
近年の人材獲得の課題は、国家公務員だけではなく、地方公務員においても深刻な課題です。私たち労働組合が行う賃金労働条件の改善要求も、この課題を踏まえたものになるのは必然です。
例えば、今年の人勧で出された通勤手当の引き上げにおいても、その視点をもって交渉に当たる必要があります。
通勤手当は、全額支給が当たり前の公共交通機関の利用と、通勤距離によって支給される交通用具利用に分けられます。
交通用具利用の通勤手当の改善要求は、燃料高騰も大きな根拠ですが、その他にも車検やオイル交換、保険加入など、多大な維持経費が掛かっているのも現状です。
また、駐車場の使用については、各自治体が自家用車での通勤を認めることと併せて駐車場を整備・確保するのは当然ではないでしょうか。駐車場の確保が難しいのであれば、残業や子育て、介護に対応できる公共交通の整備が必要です。しかし、小規模で採算性の悪い自治体では、公共交通は減少、廃止などの状況となっています。
通勤手当の改善は、組合員の可処分所得を増やすとともに、遠距離通勤や、介護・子育てなど様々な事情を抱えた職員の離職防止につながるなど、人材確保の観点からも非常に重要な取り組みとなります。
人勧を最低限とし、人材確保のための、さらなる改善をめざし、確定闘争への結集をお願いします。


在級期間表廃止が示す課題

今回は「在級期間表の廃止」について考えてみます。 今年の人勧で、「優秀な人材を確保し、定着させていく」ために、昇格前の級に一定期間在級する制度(在級期間表)の廃止が出されました。これにより「職務給の原則」のもと、職務・職責に見合った給与処遇が確保されるとしています。
さて、この国の対応を受けて、地方自治体や単組は在級期間表についてどう考えるべきでしょうか。
 自治体ごとで、昇格には試験が必要であったり、面接のみであったりと運用は様々ですが、これまで労働組合としては、賃金水準の確保のため、昇格運用の改善や経験年数に応じた対応を求めてきました。
国の在級期間表廃止が、人材獲得を目的とするように、地方自治体も人材確保にむけた処遇改善を考えていかなければなりません。自治労本部方針で最低基準とされる国公6級運用は、昇格運用の改善なくしては実現が不可能です。
少なくとも各単組は、今回の国の在級期間表廃止を昇格運用改善の機会と捉える必要があります。
一方で、人件費削減として昇給を抑制するために、在級期間表の廃止を利用しようとする自治体当局が出てくることも考えられます。在級期間表の廃止を悪用するような自治体は、公務員志望者に選ばれず、人材不足がより深刻になり、市民サービスに支障を来す状況を想定する必要があります。
自治体の責任として、政府に対して、地方自治の必要性や人員確保の重要性、地域間格差の深刻さを訴え、そのための地方財源の確保を強く要請する時が来ています。
最後に、人事院勧告の言う確保すべき「優秀な人材」とは、地方公務員ではどのような職員でしょうか。
限られた人員の中で業務を進めることを余儀なくされているなか、部局内の調整、上司との協議など高度なスキルが求められます。労働組合の役員として、組合員の声を集約し、当局との協議で培ったスキルを持つ職員は、まさに確保すべき「優秀な人材」となるのではないでしょうか。


国準拠から脱却し人材確保へ

シリーズの最終回となる今回は、確定闘争における賃金改善の取り組みについて考えていきます。
今年の人事院勧告は、昨年に引き続き人員、人材の確保に重点をおいた内容となっていますが、国公キャリア向けで、地方になじまないものも多くあります。
この勧告を受け、各単組は人材の確保を基本に勤務労働条件の改善を進め、特に国との比較であるラスパイレス指数が100を切る自治体は、人勧以上の改善を求めなければなりません。さらに、通勤手当の引き上げや駐車場利用に係る通勤手当(上限5000円)の新設に対し、単組状況に応じた取り組みを進める必要があります。
厳しい財政状況を理由に、人勧実施を渋る当局の対応も考えられますが、人勧に準拠した地方自治体への財政措置は、会計年度任用職員も含め交付税や国庫支出金などで対応されていることを意識して交渉を進める必要もあります。
昨年に続き確定闘争の争点となる地域手当については、地域間に格差をもたらし、人材確保に支障を来す内容で納得できるものではありません。昨年、地域手当の国水準以上の支給に対する特別交付税の減額措置の撤廃を勝ち取っており、国以上の手当を運用することは可能となっています。しかし、そのためには財源が必要となることから、ほとんどの自治体は国準拠から脱却できていません。地域手当の改善なども進めなければ人材が県外に流出することが懸念されます。
今後、兵庫県内で数十万人もの労働人口が減少することが予測される中、自治体の賃金の運用や制度の改善に向け、自治労本部に結集し国政へ届く取り組みがより重要になってきます。
また、各単組における粘り強い交渉で、地方公務員を取り巻く課題を明らかにする、その積み重ねが国政を動かす力となると考えています。
県本部は、各単組における交渉の活性化に向けた支援ならびに政治闘争の強化も視野に、継続した取り組みを進めていきます。確定闘争勝利に向けて、みなさんの結集をお願いします。